みんなで考える扶養控除制度

今回みなさんと一緒に考えてみたいテーマは「扶養控除」制度についてです。
扶養控除制度は、所得税および住民税において、納税義務者本人に扶養親族がいるときに、納税者の担税力に差があることを考慮して、本人の所得金額から一定の控除を行うことを目的として、大正9年に創設されました。
 わかりやすく言えば、同じ給料所得者でも一人暮らしの人もいれば妻帯者の方もいるし、子供が3人いる人もいれば、ご両親を養っている方もいるでしょう。制度創設当時は、3世代同居ということも珍しくなかった頃ですので、お祖父さんお祖母さんを養い、子供たちを育てている方の負担をなるべく軽くして、生活水準に公平性を持たせるためのありがたい制度だったわけです。
扶養控除の対象となる方は、納税者と生計を一にする6親等内の血族及び3親等内の姻族、または、里子等で所得金額が38万円以内であることなどの要件に当てはまる人が扶養親族となることができます。例えば、夫婦と小学生の子供2人の4人家族で、お父さんが納税者(本人)だった場合、血族(血のつながっている直系)であれば図1の場合はすべて扶養控除対象となり、姻族であれば、奥さまの系列(図1左側)の曽祖父母、曾孫、甥姪までが扶養控除対象の親族となり得るわけです。
さて、今回みなさまと一緒に考えてみたいのは、国外に居住している扶養控除対象者についてです。外国人と言い換えてもいいでしょう。日本国外で生活をしている人でも、例えば、配偶者が外国人で、その親類の3親等までなら扶養控除の対象になりますのでこれ自体は何ら問題ではありません。ところが、会計検査院の調査によれば、扶養控除の申告額が300万円以上の外国人(または配偶者)を調査したところ、9割が国外に居住する親族を扶養し国外扶養者では平均10.2人(国内扶養者は平均5.9人)もの扶養をとっていることが発覚しました。さらに、国外扶養控除適用額が100万円以上と多額に上っている国外扶養者のうち、税金がゼロ円の者が全体の68.8%もいたことがわかりました。またこの中には所得金額が900万円以上の者が17名もいたとのことです。最終的に税金は所得から控除を引いたものに税率をかけるから所得税や住民税がものすごく安くなり、この制度の扶養控除対象親族の範囲を目いっぱい“活用”することで年収1千万でも非課税になってしまうというわけです。税金が安くなったり非課税になったりすると国民健康保険も公営住宅の家賃も、そして保育園の保育料もすべて収める税額で決まるので高所得者でも最低額で済むようになります。

(図1)
 扶養控除制度そのものは、社会を担う子供を育て、生活水準の公平性を担保する上でもなくてならない大切な制度だと思います。しかしながら、納税者一人当たりに扶養控除対象者が10人も12人もいる、ましてや納税者本人が日本国内で暮らしているのにもかかわらず、扶養控除対象者全員が外国に暮らしていてしかも全員が外国人というのは、普通に考えてみても極めて不自然ではないでしょうか。このような不自然な事態を招いている原因は申請者本人にもあるのかもしれませんが、約100年前につくられた制度の内容や、申請方法、審査基準に、外国人労働者や国際結婚の増加など時代が大きく変化しているにもかかわらず、1世紀の間ほとんど変更が見られていないことも大きな一因でしょう。
 ではここで私たちが住むまち市川市の状況を見てみましょう。
平成30年度課税状況調べでは、扶養控除のある課税者全体数が83,685人となり、そのうち多人数の扶養控除を6人以上とした場合、本市では、179人で全体の0.214%になります。内訳としては、扶養者6人が126人、7人が30人、8人が13人、9人が3人、10人以上が7人、12人が1人となっています。
 申請手続きにおいては、続柄証明書類および送金証明書類の2点が必要になりますが、続柄証明書類も外国での居住を前提としているため、その後の追跡調査も実際は中々できず、申請上の住所に住んでいるのかどうか、生きているのかいないのか把握しきれない状況です。同じく送金証明書類にしても、送金金額や回数に基準はなく、送金者が旅行を兼ねて現地に行き、日本から送金した生活費を、送金者自らが現地でお金を下ろすという自作自演的な事例もあるとのことです。
 このように、本来は日本国内で家族を養い納税者に負担をかけないという善意の制度が、その制度設計上の隙間をついて、課税回避の有効な方法に成り代わってしまうという悲しい側面があることもひとつの事実です。
 日本で、そして市川市で働き生活し、何らかの対価、利益を得ているわけですから、市民税にしても国民健康保険にしても公平負担の原則から外れることなく、納めるべきものはちゃんと納め、その土地に住まうものとしての責務を果たせるような、そのような制度、法令の整備が急務でしょう。