新型コロナ観察記③不公平感

  今となってはありふれた言い方ではあるが、新型コロナウィルス(以下コロナ)にふりまわされた一年だと思う。かれこれもう一年半か。ちょうど昨年の今頃はオリンピックが延期になろうという時で、国も関係者も来年の2021の開催に向けて仕切り直しをしたところだった。ところがコロナは全く衰えをみせず、冬になっても猛威をふるい感染者数は増える一方、さらには、最近になってイギリス型やインド型の変異株やその二つを合体させた変異種のベトナム型までも出現し人々から日常を奪っている。
  この間、我々地方議員も議会の在り方を変えざるを得なかった。これまで市議会議事堂に議員42名が全員出席のもと開催していた年4回の定例会も、議事堂への出席者数を過半数の23~24名に減らし、また、質問時間や質問者数を制限しながら極力感染するリスクを減らそうとできる限りの努力をしてきてはいる。「感染しないさせない」を合言葉にしたその効果かどうかはわからないが、議員内においてのクラスターは発生していないし、定例会や委員会を中止にすることもないのは幸いだと思う。
  さて、私個人はというと、世がコロナに見舞われてから多くの行事や集会、演説活動等の政治的な活動が大きく制限され、それに伴い市民との接触の機会が激減した。正直言えば、早朝や夜の活動を自粛した分からだは少し楽になったが、一方で市民からの電話による相談事が明らかに増えてきた。一年前は、国からの給付金が出るか出ないかの時期で、とくに苦境にあえぐ飲食店関係者からの恨み節が大半だった気がする。しかし、その恨み節も最近は昨年末から政府が実施している時短要請協力金(以下協力金)のおかげで全く聞こえなくなった。一日当たり6万円を補償するというこの協力金だが、内閣官房のコロナ対策室によれば、協力金は時短要請に対するもので、経済補償が目的ではないとのことだ。あくまで感染防止が目的で、苦境の飲食店を救済するための支援ではないという説明だ。飲食店での会話が感染を広げている可能性が高いので、その協力に対する奨励金、つまり「ご褒美」であり、「補償」ではないということらしい。 実際、この協力金で助かっている飲食店は多いわけで、営業も継続できるわけだし、「協力金バブル」などという新語も登場しているくらいだから、経済支援ではないという対策室担当者の説明には苦しいものがある。
  このありがたい「協力金」だが、先月あたりから、あらたな恨み節が聞こえてきた。スタッフ、従業員を何名もかかえ100㎡以上の面積で営業をしている店舗からである。私も以前、数人のスタッフを雇い、駅近の75㎡の店舗でレストランを営業していたことがあるので、逆風時における事業継続の厳しさは多少知ってるつもりだ。
 簡単に言えば、この協力金は、一日あたり6万円以上の売り上げのある事業者にとってはけっしてご褒美でもなく補償でもないので、一律同額支給というのは私の経験上良策とは思えない。そこで、なぜ政府が一律6万円という金額をはじき出したのか私なりに考えてみた。
  あくまでも一つの見方として、全国には飲食店という業種で事業を行っている事業所が57~65万か所(店舗)あるといわれており、全体の市場規模(2019年)は20兆円弱というかなり大きな規模だ。ただし、この中には、立ち食いソバや居酒屋、料亭、バー、キャバクラなども含まれ、また統計を取る主体によっても数値が多少異なるため、自分の見た資料とは違うなどとは言わず、この点についてはご容赦願いたい。
  仮に、わかりやすく60万事業所とする。そして、この60万の事業所に一日当たり6万円を補償したとする。すると、60万×60,000円=360億円。×30日間=1兆800億円/月。つまり、日本全国の店舗に一律6万円補償したとしても、飲食店全体の売り上げを補償するよりは政府の財政負担ははるかに少なくてすむ。さらに、うがった見方をすれば、全飲食店のうち80%の約50万店舗は一日の売り上げがそれほど多くはない小規模店舗であるため、6万円の補償である程度は不満を解消することができる。
  これはあくまでも私見であるとお断りしておくけれども、もし、政府がこのような見方をしているのであれば的外れな策であるといわざるを得ない。
  いまどき税務署に行けば、事業者の名前、納税者番号、営業所の名称などのどれかを目の前のタイプでたたけば納税者の売り上げ、利益、納税額などは一目瞭然わずか数秒で確認できる。このデータをもとに年間利益を算出し、日割り計算するなどして、その事業規模に合った協力金を補償すればいいと思う。個々の事業者さんは自分が申告した利益をもらえるわけだから大喜びはできなくても恨むことはないだろうし、事業規模を無視した不公平感も生まれないと思う。ただ問題は、税務署と政府の政策の地元の窓口である市役所のような自治体とが、即効性をもってPCデータのやり取りをできる環境を持ち合わせているかどうかである。
  ワクチン接種の予約においても、各自治体は混乱し、50人体制のコールセンターはパンク寸前、デジタル技術なくしては、予約を取るという普通の生活行為すらままならぬといっても言い過ぎではない社会になってきている。いざという時のために、すでにいざという時は来ているが、国が先端テクノロジーを積極的に取り入れ、国内1,800以上の自治体に速やかに浸透させ、国民誰一人もとり残さないこと。これが今回のコロナ災害が教えてくれた教訓のひとつである。