Monthly Archive for 10月, 2020

新型コロナ観察日記②稲の花

コロナ禍で外出外食の機会がかなり減った私ですが、その分お米を食べる量が増えてきているような気がします。いや、確実に増えています。
アジアの各地域やインドのカレー、スペインのパエリャにみられるように、お米は世界中の食文化に登場し、長きにわたり、その地域の人たちの貴重なエネルギー減として食されてきています。しかし、お米そのものを単独で食べて「おいしい」と感じるお米はそれほど多くはないのではないのでしょうか。

今回は、私たちの食生活と健康を支えてきた、お米となかなか見ることのできない稲のお花について少しだけお話ししたいと思います。

春、田んぼに植えた稲は、生長が進むと、茎の中からやがてお米に変身する幼い穂が押し上がるようにして出てきます。これを出穂(しゅっすい)といいます。
穂の先の方から稲の花が咲き始めます。花びらの無い花です。中からは6本のおしべが出ています。稲の花の咲いてる時間は短く、晴れた日の9時頃に咲き始め、11時頃には閉じてしまいます。この約2時間の間に受粉を終えます。
おしべの根元をたどっていくと、そこには小さなめしべが見えます。めしべに付いた花粉は、すぐに花粉管を伸ばし受精を行い、受粉が終わると稲の花はすぐに閉じてしまい、もうその稲の花は2度と開くことはありません。
稲の開花時期は品種によって違います。種まきから大体115~120日目頃。田植えから数えると、およそ50日後(早稲:わせ) から80日後(晩稲:おくて)に穂が出ます。
稲を見た時に、穂先が少しでも曲がりかけた物はすでに開花が終わって実が太り始めたものです。
1本の穂には、100個くらいの花が付いていて、穂先から順番に咲きます。開花時間は約2時間で、全部が咲き終わるまでに1週間程かかります。少しずつずれて花を咲かせるのは、子孫を確実に残すための自然の摂理で実に良く出来た仕組みです。開花の適温は約30℃で、開花期に低温になると花粉の受精能力が落ちて不稔籾(ふねんもみ)が多くなります。
開花から約40~50日間に、光合成によりデンプンを生産し、胚乳(はいにゅう)に溜め、稲の種子であるお米を充実(登熟:とうじゅく)させていきますが、この期間を登熟期といいます。

稲は昼間、太陽の光で光合成を行います。登熟期に晴天が続くと、光合成が盛んに行われて、お米は美味しく実り、たくさん獲れます。人間にとっては厳しい暑さも、稲にとっては恵みとなります。

日が沈んで光合成ができなくなると、昼間に光合成で作ったブドウ糖を稲に送り込む、これを「転流(てんりゅう)」と言います。ただし、夜間の気温が高いと稲の呼吸が盛んになり、光合成で作ったブドウ糖を消費してしまいます。夜間は気温が低い方が良いわけです。お米作りには昼間は暑く、夜間は涼しいという天候が理想的とされているのはこのような理由からです。

 個人的な話ですが、私が食べているお米は栃木の黒羽という那須塩原駅からやや東側の地域産のもので、その収穫前の田んぼを数年前に案内していただいたことがあります。
田んぼに着いて車から降りるや否や、あたり一面黄金色に輝く稲穂はそれはそれは見事なもので、またなんともいえないふんわりとしたとても柔らかい香りが漂っていたのを今でも鮮明に覚えています。ここのお米は、農薬や化学肥料などは一切使用していない、土が本来持っている力で育てる自然農法という栽培の方法だと聞きました。
以来、私はここのお米を常食としており、さらに言えば、同じ農家さんの白米と玄米をそれぞれ半分ずつを混ぜ合わせたオリジナルブレンドでいただいてます。
白米と玄米を合わせることで、白米の旨みと玄米の香ばしさを同時に味わうことができ、白米に不足しがちなビタミンやミネラルも摂ることができて栄養バランスにも優れています。さらに、自然農法でつくるこの農家さんお米は、粒のひとつひとつがしっかりとしているので、そのまま食べても味があるし、塩だけのおむすびでもお米の味がなお一層引き立ちます。また、お茶漬けやカレー、かつ丼などの丼ぶりもの、チャーハン、パエリャ、リゾットなど洋の東西を問わずあらゆる料理にもとてもよく合うのです。

  私の嗜好の話はともかくとして、なかなか収束の兆しが見えないコロナ禍において、普段できないことをしてみる。あるいはこれまでやろうとしなかったことをやってみる。例えば、日々の忙しさにかまけてあまりにも普通に毎日口に運んでいたお米について少しだけ考えてみる。すると外食した時も、ここのお米はどこのお米なのか、自分ならもう少しかために炊くなぁとか、あるいはちょっといいお米を買ってきてこれまでのと食べ比べをするなど生活の中にいつもと違う流れを加えてみる。
食を通して健全な食生活を実践できる人間を育てることを「食育」といいますが、同じように美育、花育という言葉も最近では唱えられているようです。

冒頭の、一年の限られたごくわずかな時間しか開かない稲の花について調べてみる。稲の花を観察することで作物に宿る生命を感じるし、生命を感じることでそのものを大切にしようという心も育まれるかもしれません。食べ物を大切にしようという食生活そのものや我々の健康、社会の健康、また昨今社会問題化しつつある食品ロスへの関心も高まるかもしれません。

開花時期はごく短時間でも、やがてたくさんの実をつけ多くの人々の食生活を支える稲のように、私も、行政にかかわる人間の一人として、市民一人ひとりの声に耳を傾け、地域の未来と市民の暮らしををしっかりと支えられる市政を行っていきたいと思うのです。