医療とまちづくりシンポジウム

 先週10月15日(土)、16(日)と金沢で開催されたまちづくりシンポジウムに参加してきた。北陸新幹線で東京から2時間40分弱は、かれこれ25年ほど前金沢まで10時間かけて車で移動した私にとってはまさに夢のような驚きでした。会場までのタクシーで運転手さんが言うには新幹線の開通でおかげさまで毎日観光客がいらっしゃり大きいリュックを背負った外国の方も少なくないという。反面これまでの庶民の台所であった近江町市場や地元の商店街は軒並み物価が上昇し駅前の不動産などは人気沸騰で個人名義では賃貸契約ができないほどになっているということです。新幹線は金沢に外からの利便性をもたらすと同時に地元庶民の日常を奪ってしまったか。といえば大げさかもしれないけれども新幹線がもたらした功罪は新幹線開通後2年というその経済波及効果を待たねばなるまいか。

 さてシンポジウムである。初日は兼六園近くの本多森のホールという1,700人の会場で開催され満席。地域コミュニティーの役割について4名の講師が登壇され各々その取り組みについての話を伺った。共通しているのは現在日本の医療は大きく変わろうとしていること。いま国全体が超高齢化社会の渦中にあることは言うまでもないことだが、簡単に言えば現行の病気の構造は急性疾患から、がんを含む生活習慣病を中心とする慢性疾患へとシフトしてきている。生活習慣病の病態は身体的、心理的、環境的、社会的な要因などが相互に絡む複雑なもので保険の枠で行われる近代西洋医学だけでは自ずと限界があり、新たな医療体系の構築が必要であるということだ。5年半前の東日本大震災がこのような変換の引き金になったと考えられているようだ。
 また従来の救命・延命、治癒、社会復帰を前提とした病院型の医療から、慢性疾患、複数の病気を抱え病気と共存しつつQOLの維持・向上を目指す地域型の医療への転換が必要であるということも指摘された。これは我々行政側も大いに参考にし推進しなければならないことでいわゆる自助・公助・共助の連携が必要だと改めて認識させられた。中にはお互いに助け合う=互助をより身近な方々で支えあう=近助という考え方を唱える講師の方もいらっしゃり、これも我が市川市の社会福祉協議会が推進する「向こう三軒両隣」の考え方と一致するものである。
 平成16年に2町合併で誕生した人口約12,000人の鳥取県南部町では、まちの集会所などを拠点に「まちの保健室」を開設し、保健師が住民の様々な病気のサインを早期に察知し積極的に予防介入して成果を上げているとうかがった。さらにはボランティア活動の可視化のために「あいのわ銀行」という制度を条例で制定し3千万円の基金も設置しており、また独自のヘルパー制度を創設し4級は大人、5級は中学生、高校生、6級は小学生に認証するなど市民と医療との独特の連携を構築している。病院型の医療から地域型の医療へと上手に転換している一つの成功事例といえよう。人口50万弱の本市にそのまま適応できるかどうかは別としてこの事例に学ぶところは大いにあるといえる。
 今回のシンポジウムは統合医療というこれからの医療分野のひとつであったわけだが、そもそもこの統合医療は、現行の医療制度とともに、伝統医療、食の安全と食育、健康増進のための住環境・社会環境の整備など、健康増進のためのあらゆる活動を統合する医療と、それに関係する活動を指す。そして統合医療には医療モデルと社会モデルがあり、お互いに補い合って健康長寿社会の実現を目指すということだ。いずれにしても現在我々が生きているこの超高齢社会を、今後どのように対応し、乗り切ってゆくかが大きく問われていることは紛れもない事実であり、そのためにもこの統合医療という概念の普及啓発作業も必要であると痛感したシンポジウムであった。
 
 本市としては、まず政策として立案運用前に、例えば、市の庁舎や総合病院の一角に「統合医療」についての相談窓口を設けてみるとか、それが難しいのであれば、公報などで「統合医療」という特集を組んで「統合医療」ということばの認知啓蒙に努めることから始めても選択肢として大いにあり得るだろう。

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