秋になりました

最近ではあれほど暑かった夏がウソのように気温も下がり朝晩は厚手の長袖がないと肌寒さを感じるようになった。キンモクセイの香が仄かにただよい街中にいても秋の訪れを実感する。食欲の秋、読書の秋の到来か。

先日、作家の山崎豊子さんが亡くなった。敢えて言うまでもなく数々の社会派小説を世に送り出した作家の一人だ。最初に読んだのは「華麗なる一族」だった気がする。氏の作品はどれもそうであるように綿密な調査とそれに基づく膨大な資料が裏付けとなる一定の事実に山崎氏なりの創作を加えた長編ドラマはもはや小説の域をこえてひとつの研究資料と言ってもいいくらいだ。描かれている人物や企業も仮名を使っているものの容易に察しがつくのもおもしろい。例えば「不毛地帯」の企業や主人公の「壹岐正」は日本を代表するI商事であり元会長のS氏をモデルとしている。さらに興味をそそられるのは「沈まぬ太陽」中に航空史上例のないジャンボ機墜落という未曾有の大惨事が描かれているが、巻末に山崎氏はこう付け加えている、「私はこの事故について数ある諸説のなかで墜落説という立場で書かせていただいた」と。あまり真実を追及されると困る勢力が何時の世にも必ずいる。その証拠に山崎さんは時々脅迫もうけていたらしい、がそんなものにはびくともしない氏の作家姿勢にご冥福をお祈りしつつ賛辞をお送りしたい。

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